マーレのデモンストレータ ダウンサイジングエンジン
内燃機関の効率が、輸送システム全体のエネルギー消費量とCO2排出量を大きく左右します。来世紀になっても、このことに変わりはないでしょう。エンジンをさらにコンパクト化する、ダウンサイジングというコンセプトがエネルギー効率を高める重要な鍵となります。排気量と気筒数を少なくするために最先端技術を結集するのです。
ダウンサイジングは、標準的走行サイクルで重要な意味を持つ実走行領域の燃費を劇的に高めてくれる一方、ダウンサイジンだけでは実際の運転では特に加速性能を低下させてしまうという問題があります。そのため、私たちマーレは開発したダウンサイジングエンジンを使って、路面状況や走行スタイルが燃費にどう影響するかのシミュレーションを行い、ダウンサイジング技術には、標準サイクルと実際の走行条件の両方で燃費を大幅に改善する可能性が秘められていることを確認しました。
エンジンのコンパクト化の流れはヨーロッパのガソリンエンジン車を中心に急激に拡大していますが、自動車市場が急成長している新興国でも、重要な役割を果たしています。ダウンサイジングは、標準サイクルを基準とするCO2 規制を満たす上で重要です。この技術では、負荷ポイントを比燃費が低くなる領域、すなわち高負荷域に移して比出力と平均圧力を高めますが、別の問題も生じます。エンジン部品に作用する応力が増してしまうだけでなく、高負荷領域での運転時間が長くなり、特に過渡での状態がが激しくなるため、実際の燃費節約効果が目減りしてしまうのです。
具体的には、エンジン部品にかかる熱負荷を限界内に保つために、例えば燃料噴射量を増やして冷却を促進するという必要が生じます。また、過渡状態では行程容積が小さくなり、自然吸気レベルのベーストルクが下がってしまうため、ターボチャージャにより加速性能を高めることも必要です。いずれも燃費の改善につながる難しい問題です。
更に、重量をはじめとする車両の仕様、エンジンのタイプ、さらには走行スタイルなどによって、標準平均燃費とユーザーが運転した場合の燃費に極めて大きな差が生じる場合があります。ダウンサイジングを極限まで追求した上で、実車の燃費をさらに改善する- その目的に向け、マーレの研究開発は、これまでの技術を高度にシステム化するための検討へとステージを進めています。
マーレのダウンサイジングプロトタイプに搭載されているのは、自社開発の3気筒ガソリンエンジンです。
プロトタイプのデータ
エンジン | |
型式 | 直列3気筒ガソリンエンジン、ターボチャージャ、直噴、1気筒あたり4バルブ |
行程容積 [L] | 1.2 |
ボア/ストローク [mm] | 83.0/73.9 |
圧縮比 | 9.3:1 |
定格出力 [kW] | 120(5,000~6,000 rpm) |
最大トルク [Nm] | 286(1,600~3,500 rpm) |
過給機 | Bosch Mahle Turbo Systems(BMTS)製、単段式ターボチャージャ |
重量 [kg] | 125(乾燥重量) |
車両 | |
重量 [kg] | 1,575 |
燃費 NEDC [L/100 km] | 5.8 |
CO2 排出量 NEDC [g/km] | 135 |
0-100 km/h加速 [秒] | 8.7 |
80-120 km/h加速 [秒] | 8.9(5速) |
最高速度 [km/h] | 213 |
排ガスレベル | Euro 5(Euro 6対応可) |
路面状況と走行スタイルに基づく分析で、走行スタイルが燃費を大きく左右することが確認されました。ユーザーの運転による実際の燃費と標準平均燃費の間に発生する著しい差は、システム化技術で少なくすることができます。確認されたデータは、ダウンサイジングとそれに関わるシステムおよびコンポーネント開発の妥当性を証明し、推進させるものでした。
現在マーレは、クールドEGR、サーマルマネージメントの効率化、フリクションロスの低減、補機類の電動化、ターボチャージャの最適化などシステム化技術を開発対象としています。そうした技術が実用化されれば、自動車メーカーが目指すCO2 排出削減の現実性が大いに高められることになります。
ダウンサイジングプロトタイプの走行は、最新の内燃エンジンに更なる燃費節約の大きな可能性が残されていることをはっきり示すものでした。その可能性を余すところなく引き出すには、革新的なマーレの製品と技術を装備し、適切な走行スタイルを守ることが重要です。